INAZUMA稲妻


刀の傷があなたを忘れさせない。
真剣勝負が彼女の憎しみを激しい愛へ変えていく

あらすじ

 ドラマの撮影中に事故が起きた。加島(松蔭浩之)が刀で相手役のセリ(宮田亜紀)の頬を斬ってしまったのだ。

 セリは入院して治療を受けるが、すぐに現場に復帰する。カメラの前で「あんたの名を教えてよ。仕返しに行くから」と加島に迫るセリ。その姿には演技を超えた凄みがあった。

 休憩時間、セリはいきなり加島に斬りかかる。思わず刀を抜く加島。だが、刀は竹光だった。事故が起きてから、加島は真剣を使うのを止めていたのだ。「何で真剣じゃないの!今さらオモチャじゃ、しらけるじゃない!」。真剣勝負を望むセリの言葉が加島の心を稲妻のように貫く。

 撮影が再開された。本番で加島が手にした刀は真剣だった。セリはふっと微笑む。「やっと、やる気になった?」。加島の妻・千華(西山朱子)、セリを慕う消防士(布川恵太)を巻きこんで、二人の戦いはエスカレートしていく。セリを衝き動かしているのは、強い憎しみなのか、それとも激しい愛なのか。

☆解説☆
 セリ(宮田亜紀)と加嶋(松蔭浩之)が出演しているTVドラマのタイトルは『デジャブ街道』。別世界の時代劇なのに、なぜか懐かしさを感じさせる日本的な光景。まさにデジャブだ。けれども、もっともデジャブと呼ぶのにふさわしいのは、ドラマの中身だろう。セリが加嶋に仕返しする場面と、加嶋がセリに仕返しする場面の際限のないくりかえし。
 永遠に続きそうな復讐のドラマは、役者にとっては大きなプレッシャーだ。前の戦いより、さらに激しい戦いを演じるにはどうしたらよいのだろう。たぶん、役者なら、たどりつく結論は一つしかない。役を演じるのではなく、役を生きてしまうこと。
 加嶋は自分の役を生きるために本物の刀を使い、セリの頬を斬ってしまう。その瞬間、加嶋は役を生きるという危険な夢から目が覚めるが、セリはちがった。火照り疼く傷痕が彼女の女優魂に火をつける。彼女は自分を捨てて、役そのものになりきって加嶋を憎む。
 加嶋に真剣を使って戦えと呼びかけるセリ。加嶋はその言葉に衝き動かされるようにして真剣を手にする。「やっと、やる気になった?」と言って微笑むセリの姿には、ぞくぞくするような美しさがある。このとき、憎しみは愛へと変化しつつある。

『INAZUMA 稲妻』
(2005年・DV・30分)

キャスト
セリ:宮田亜紀(セリ) 
松蔭浩之(加嶋) 
西山朱子(千華)
布川恵太(正留)

スタッフ
製作:映画美学校(第7期フィクション高等科製作実習作品)
製作管理・進行:山口博之
監督:西山洋市
脚本:片桐絵梨子
撮影:芦澤明子
照明:佐久間栄一
音楽:佐々木秀典、佐藤ハチ恭彦、村山竜二
助監督:土屋圭、倉木伸也、高杉考宏
撮影・照明助手:児玉和人、別府裕美子、川口力、吉田明義、小林あい
録音助手:片桐絵梨子、新垣一平
美術:寿時利夫、杉山七生、富田靖生、吉田雄一郎
編集:土屋圭、高杉考宏、倉木伸也、吉田雄一郎、杉山七生
合成:児玉和人
制作:高田伸也

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